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太宰生誕100年

507dazai  太宰を嫌う人の理由に、「品行が悪い」「女々しい」「だらしない」と言った負のイメージが多いのは仕方ないことか? それでも熱狂的なファンはどの世代にも居る様で、6月19日 誕生日であり入水自殺体発見日には桜桃忌(おうとうき)として、墓のある三鷹の禅林寺は大変な賑わいのようです。期せずして、向かいにある墓の主:森鴎外も鼻白む思いだろうと…。

 太宰 治(1909年(明治42年)6月19日 - 1948年(昭和23年)6月13日)、本名は津島修治。青森県北津軽郡の金木村生まれ。生誕100年は肯けるが、38歳で早世していたことに驚いた。あの老け顔や、処女短編集『晩年』ってのも印象を狂わしている。思えば芥川が35歳で服毒自殺、宮沢賢治が36歳で急性肺炎で亡くなってるから早世という歳ではないのだ。

 今で言う地方素封家出の甘えん坊の放蕩息子は、文学的には非常に老成していたわけです。放蕩息子の類に、山口の中原中也や新潟の坂口安吾がその時代を交えて存在する。僕の中では「大正デカダン」=無頼と退廃とがアヴァンギャルドへと向かう、純粋な文学回帰の時代でとても好きなのだ。

 
 太宰人気を映して、今年は相次いで公開される映画化が3作。
 その内の「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」がモントリオール映画祭で監督賞を受賞。根岸吉太郎は「遠雷」=立松和平原作で認められた監督。小説の映画化は得意の様で、太宰ものも若い頃の手掛けている。白髪の良く似合う老大家になってきた。おめでとうございました。

 その他に、佐藤江梨子(さとえり)主演の「斜陽」と芥川賞作家 川上未映子が女優デビューの「パンドラの匣」。どれも個性的で面白そう。2009太宰3部作でDVD化されると嬉しいかも…。

 太宰を深読みすると、たまに船酔いと同じ気分を味わう。文脈の流暢さはハッキリ漱石を超えてると思うが、その自虐さには辟易してしまう。ウンザリしながらも引き込まれて、決めの文句で絶句して泪している。これがいけない。太宰は癖になる。
 主な作品は読んでしまったので、後は全集の書簡集を漁るしかあるまい。

 謂わずと知れた太宰の娘、津島佑子:本名は里子(さとこ)もすでに日本を代表する小説家である。分筆に世界に親の七光りもないだろうし、女流として本格の純文学者一筋である。歳を負うごとに父親の面影が、顔に出てくるのは哀しいことかもしれない。

 太宰は人生の大半を、薬物中毒症状で苦しんだ。慢性的な躁鬱を繰り返し、その合間にモノにした作品にも濃い影を見ることができる。精神科の主治医に「サイコパス」とまで言われ、結果「人間失格」などと直截な題名の小説を、赤面勝ちに書き上げた。挙句の果ては冗談まじりの狂言心中が、3度目の正直になった哀れさの追い討ちであった。

 遺作になった連載中の「如是我聞」には、口惜しい男の女々しいほどの文学への遺恨が満ちている。愛しくてイトヲシクテ、泣かずに読めるか!

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