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ペイ・フォワード「可能の王国」

Pay_it ペイ・フォワード(Pay It Forward)「可能の王国」
キャサリン・ライアン・ハイド著 角川書店 2000年初版
残念なことに廃版のようで、古本か図書館に当たるしかないようです。

 同じ2000年に天才子役:オスメント君主役で、上映された同名映画をTV放送で観ていました。ハーレイ・ジョエル・オスメント君は、前年の「シックス・センス」で11歳にしてアカデミー賞にノミネートされた前途有望の少年でしたが、これも残念なことに成人を目前にマリファナ所持で保護観察処分を受けたようです。天才と呼ばれた子役に関して高い確率で、こんなことになってるのは日本でも同じ?

 
 それはさておき、原作を映画と照し合せて読む作業は普通つらいものですが、今回の場合は変に感動的でもあったのです。
 社会科の授業で「世の中をよくするにはどうしたらいいか考え、実践しなさい」と言う命題を出す中学校の教師に、映画ではシモネット先生(ケヴィン・スペイシー)の白人で、原作の黒人のルーベン先生を簡単に置き換えている。控えめな渋い脇役の多いケヴィン・スペイシーの演技は悪くはなかったけど、換える理由が分からない。ベトナム戦争で顔半面をひどく火傷して、その容姿を気にし心の闇を抱えた教師。生徒トレヴァーのアルコール依存症の母親(ヘレン・ハント)と惹かれ合う流れに、多少無理を感じたのか?

 どちらにしても主題のPay It Forwardの発想は明快で揺らぎが無い。古くからあるネズミ講やマルチ商法の概念に重なってくるのが難点ですが、ここはシンプルに「次に贈る」思想と考えよう。

  まず3人の他人に自分のできる範囲で為に成ることしよう。その時その人に、お返しの代わりに他の3人に同じことをして欲しいと依頼しよう。その先はネズミ算式にその善行らしいものが広がってゆくだろう。勿論、人間の絶対の善意に希求した理想の世界ではあります。どこの段階を切り取っても1から3への行為という本人次第の問題でもあるところがミソ。物語でも触れられていますが、一歩踏み出すことの難しさを学ぶことになります。一種の社会問題提起ですよね、これって。

 実際にこのPay It Forwardは社会運動として多少の広がりの見せているようですが、現実のアメリカ民主主義の破綻を見ても、まだまだ民衆に其の芽は難しい状況でしょうか?

 それにしても全体的に暗い社会背景が漂ってます。浪費と放浪癖のある父親(なんとジョン・ボン・ジョヴィが演じてました)との関係も然り、最初の依頼者の麻薬常用者は、本人の意に反して社会落伍者に逆戻り。孤独死をする老婆、アイデアを我が者にするヤクザもの。たどり着けないノンフィクションライターのもどかしさ。クリントン大統領にホワイトハウスに招待されたその夜、トレヴァーは最後の善行の目前で命を落とします。
 救われるのは、物語の中だけでも理想社会は確実に成果を上げ、世界に平和が訪れつつあると言うイメージで、トレヴァーの鎮魂際に数万の群集の灯すロウソクの明かりが満天の星屑以上に美しいというラストを飾ります。

 著者本人のあとがきには、ちょっと興醒め感がありますが、Pay It Forwardの描く理想世界の命題は、多分宗教や哲学の枠を超えて永遠のものだと思えるのです。

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