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まほろ駅前多田便利軒

Mihoro  今年24歳になる長女のお気に入り作家のひとり。
 名付け親としては喜ぶべき読書家として育った娘の蔵書に、最近はめっきりお世話になっている。多少偏った傾向はあるものの、青いなりに的を得た選択をしていると思うのは勿論「親の欲目」に違いない。

 語呂の軽快なこの作品は、2006年上半期・第135回直木賞受賞作 。作者:三浦しをんは、1976年(昭和51年)生れの女性であります。
 東京都出身。横浜雙葉中学高等学校から、早稲田大学第一文学部演劇映像学科に進む。当初、編集者志望であり出版各社への就職活動中、早川書房での入社試験の作文から、担当面接者であった編集者(村上達朗)に執筆の才を見出され、村上が早川書房を退社後に作家に転進するよう、勧められる。1999年3月、同大学卒業。2000年4月、就職活動の経験をもとに処女小説『格闘する者に○』(草思社)を出版。これに先立ち、1998年11月から、Boiled Eggs Onlineのサイトにおいて、ウィークリー読書エッセイ『しをんのしおり』を連載する。
 同じ第135回直木賞受賞作家:森 絵都も早稲田の先輩になります。相変わらず早稲田の文学部は伝統に則って文学者を輩出しています。この森 絵都の「DIVE!!」も娘の蔵書で読みました。ってことは? 昨今の文学の主流派は少女漫画とスポコン青春ものとの微妙なバランスを標榜しているのだろうか?
 
 先立って三浦しをんのエッセイ集を読んでいるので、直木賞を狙ったこの作品への確固たる執念と卓越した文章の化け方には感服する。エッセイを読んでると性別も年齢も超えて、このひとは策略家だと感じる。とにかく言葉の引き出しが多いのは確かだし、自虐的な裏返しにも長けていたり、古今東西のこけおどし的な文章のエッセンスにも造詣が深い。時代は古いが田辺聖子をホウフツサセル文筆家には違いない。
 
 主人公・多田は、駅前でひとり便利屋を営んでいる。いきなりイワクありげな同級生:行天に再開。ふたりの掛け合い漫才と事件が交差しながらお話は進み、お互いの過去が明らかになる。高校時代は顔見知り程度が、おなじように家族をなくしたバツイチ同士でドロップアウト生活をする男臭さとは別に、現在のゆがんだ社会と希薄な人間関係の汚濁の中でも、一本気ではある正義と誠意を保っている姿が泣かせます。そこは女性作家のキムタク嗜好路線で切なくも美しく語らせて、夜の闇にも寄り添ったりしますが…。
 一見ハードボイルド小説で、やはりどこか甘ちょろい恋愛小説でもあり、でも投げやりなだけの青春小説とも思えず、少なくともわずか救いのあるトレンディな月九ドラマでもある。そんな微妙にセツナイ青春ものも久しぶりで、一気に読み通してしまった。露骨に善し悪しを言う気はないが、取り立てて心を揺さぶる仕掛けはない。それでも現在のフリーターを標榜する30才近くなっても成人できない若者達に、一抹の希望を与えるものではあるかもしれない。

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