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かかし長屋

Kakashi かかし長屋
半村良
 
  誰にも苦手な作家と言うのは在るもので、赤川次郎村上春樹の次に敬遠してきた『読まず嫌い』の作家のひとりでした。

 1933年10月東京都生まれ。本名、清野 平太郎。両国高校卒後、連込み宿の番頭やキャバレーのバーテンなど各種職業を転々とし、1962年SFマガジンでの掌編「収穫」で作家デビュー。71年に刊行した『石の血脈』、以降一連の作品で、「伝奇ロマン」や「伝奇SF小説」と呼ばれるジャンルを開拓。73年「産霊山秘録」で泉鏡花賞、74年「雨やどり」で直木賞受賞。93年「かかし長屋」で柴田錬三郎賞を受賞。2002年3月4日、肺炎のため死去。享年68才。
 なんと言っても1979年に角川映画でブレイクした『戦国自衛隊』の作者です。

 つとに、ペンネームがイーデス・ハンソンをもじったとする噂の人物ですし、SFマガジンの重鎮には違いないのですが、軽量浮薄なイメージが先走って食指が動きませんでした。亡くなった偉人に申し訳なく、ここで改まって反省させて頂きたいと思います

 今をときめく才女・宮部みゆきをして平頭せしめた、長編の「どぶどろ」の社会派人情時代物ミステリーの流れを汲むこの「かかし長屋」には、僕もやられました。

 登場人物は多彩です。江戸下町の貧乏長屋は、近在の証源寺の先代の住職が御上の了承を得て築いた人情長屋。下働きの大工の夫婦や母子家庭は勿論、対人恐怖症で実家を出た旗本の次男坊、陰のある飴売りの若者、そして盗賊としての過去を捨てて隠れる扇職人など。枚挙に暇が無い。
 若き住職=忍専は、事あるごとに長屋の住人の支えになることを寝食にするが、お寺には月々訳ありのお布施が届けられている。先代の住職は相当な人物だったんでしょう? 江戸の長屋の中でも幕府の特区的なエリアを獲得?してる。
 そういう訳もあってか住人も過去有りの輩が多い。長屋の入り口で寺子屋を開く御仁も、実は昔・旗本の剣豪。長屋の用心棒的にいい感じです。

 このお話、半村良ファンには物足りない程、ミステリー性に乏しい。NHKの時間つなぎ時代ドラマ的に一話読切の淡々さですが、何故かシミジミ読ませます。人情物に弱くなった読者の年齢にも理由はあるのでしょうが、時代小説のわりに人物が描かれてます。
 古きよき江戸の風物詩と庶民の生業のなかには、満たされない不自由の中にあるささやかな幸福を見出す能力があるってことなんでしょう。

 お勧め度:水戸黄門も大岡越前もやはり昔がよかったとお嘆きのあなたに、星4っつ。

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