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玄い女神

玄い女神(くろいめがみ)
(建築探偵桜井京介の事件簿)
篠田真由美 著 講談社ノベルス

建築探偵という言葉にグラッと来て読んでしまいました。著者は早稲田大学の文学部卒、年代は僕より少し上なので、遅咲きの推理小説家であります。東洋文化を専攻したと言うこともあってこの本ではインドの衒学的な知識満載です。でも何故、建築探偵?

前提として愛すべき探偵役の桜井京介は、W大学文学部の院生なのに教授の研究室をほぼ独占している変わり者。古い建築とその歴史的背景に興味があって現地実測を生業とするというふれ込み。著者の後書きによると、館がらみの推理小説が個人的に好きでこんな無茶な設定になってるところもあるらしい。
まあ結局その館がらみで、お約束の殺人事件が起こるわけです。
しかも頭から京介は、名探偵としても有名だったりするらしいから凄い。その上、長髪とサングラスに隠された美貌の持ち主。不登校高校生の蒼(あおい)くんと京介の同級生だけど巨体で行動力のある栗山深春の3人トリオ。三銃士?ってこと。この探偵トリオの素性は謎の部分が多い。楽しみな部分として後のシリーズに残しているんでしょう。
「玄い女神」はシリーズ2作目です。1作目は、「未明の家」という題でスペイン帰りの御曹司が建てた謎の別荘が舞台。別に建築的にトリックが使われるわけでもなく、外観様式も平面もアバウトで小説は成り立ってるのが残念。許せるのは、建築用語に誤りが無いこと。有名処の建築家も押さえてますし、さすが早稲田卒、周りに良きアドバイザーがいるのでしょう、そつがない。やはり昭和20年代生まれ、きっちり仕事してます。

本格推理のお墨付きをもらっただけあって、文章もプロットにも破綻があまりありません。最後に唸らせるのは、登場人物の名前にこっそりロジックを混ぜてること。細かいところに拘ってます
それにしても時代設定が古すぎるかな? しろうと劇団のメンバーに起きた10年前の事件の精算という暗いストーリーも時代錯誤かも。その集会に中学生の京介も出入りしていた等と、どんな増せた中学生や! 学生運動の時代か! とツッコミを入れたくなります。
種明かしのトリックは冴えませんが、犯人の心理描写が巧くてこれも許せます。そう言うのを本格推理って言うの? 最近の本格ものには、何重にもトリック崩しがあって複雑で難解なものが多いのですが、この人のは流れが素直でTVの2時間ドラマみたいに読みやすい。分類はよく理解できませんけど、シリーズを読んでみたくなるには違いない。実際、3人トリオの出生が気になって仕方ないのです。

お薦め度:裏読みの本格推理に興味のある人に星4っつ。

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