« 構造設計の手法 | Main | 玄い女神 »

小住宅の構造

ike019小住宅の構造
池田昌弘 著
A.D.A.EDITA tokyo 発行 2,200円+消費税

また建築構造関係の本になっちゃいました。

実は現代の建築界の様子を語るのに、構造関係の絡みを無視できない状況があるのです。今はやりのデザイナーものは、多かれ少なかれ新しい構造解析の洗礼を受けざるを得なかったみたいです。
その先駆者が前出の佐々木睦朗氏ですし、協同者であり木村設計の同部屋弟子である池田昌弘もまた、時代のトリックスターとして脚光をあびるひとりです。

多分、日本の建築界でも設計者として意匠設計者と連名で作品を発表したのは彼が初めてでしょう。最初はコラボレーションと称していましたが、この本では「インテグレーション(統合)」という職能として語っています。まさに施工環境まで含めて建築を構築するためには不可避な存在になりつつあります。構造屋さんと呼べない、特殊な技術職人であり優れたデザイナーでもあるのです。
(実際最近は、自分の裁量のもとでチームを組み有名意匠設計者抜きで、作品を発表しはじめました。)

この本は、題名のとおり彼が独立してから介在した、数々の小住宅作品を丁寧に解説しています。入江経一との軽快な造型、手塚夫婦とのシンプルなボックス住宅、米田明とは真っ白な内部空間に見事な螺旋階段を浮かべて見せました。今新しい建設システムでもブレイクしている山下保博とは、工事費まで関与した大胆な構造システムを提案、完成させてしまってます。

特にこの本では図面を省き、針金で組んだだけの構造モデルをひとつひとつ提示してあります。これは構造を、網状の線形でとらえる彼の思考がよく現れていると思えます。建物に流れる血液のような応力が、緩やかに全体に拡散して軽やかに保っているそんな建物です。
法的に緩い小住宅だからこそできる、わけではありません。
建設予算から類推しても、設計料なんて知れたものです。作業量の何分の一かの費用で、こんな複雑でフィードバックの多い構造解析を何故してしまうのか? やはり、拘りとプライドと社会貢献への努力以外にないのです。

これからの住環境も含めて、再利用や環境問題、新しい価値観の創出を推し進めてゆくには、こういった構造関係の試みが必要です。
もしかするとそれは、河豚を食わずして死ねるかと言った先駆者の心意気に比べるべくもないことなんでしょう。

最近の構造計画の指向性は、構造体と仕上げという区分けを一旦はずして、仕上げの部材も構造の要素と考え、無駄のない建材を流用する。しかもそれが、単純な構造要素を消し去ってしまって非常に細くて軽快な建物を創出できる点です。
実際に見た目には危なげなバランスの建物、でも明快で微細な計算がされているその空間には、普段にはない緊張感が感じられます。決して住みやすい=住み慣れて懐かしいと言った空間ではありませんが、非常にドラマ性と開放感を内在していて、都市型住宅としてひとつのプロトタイプに成り得るものです。

中でも面白いのは、町屋プロジェクトなるものです。親戚同士が所有する土地に3棟の戸建て住宅を3人の建築家が設計する。3者3様の設計スタンスに構造家兼マネジメントとして介在し、コストコントロールまで含めた自然な町屋集合住宅の在り方を、追求しています。
土の上ではそれぞれのボリュームが主張しあい、牽制しあっていますが、土の下では基礎構造を共有しているといった、なんか微妙に微笑ましい関係で成り立っています。珍しい建設のありかただったのだと思います。

こういった意匠設計者+構造設計者+施工者がチームワークを組んだ建設は、21世紀の主な建築システムとして構築されてゆくと考えられます。そのときに、それぞれがお互いの立場や意向を理解し合える関係であるためにも、日々の勉強や研鑽は必要なことなのです。

お薦め度:あれっ構造屋さんて格好いいなぁ!と思い始めた人に星4っつ。

|

« 構造設計の手法 | Main | 玄い女神 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 小住宅の構造:

« 構造設計の手法 | Main | 玄い女神 »