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構造設計の手法

sasa020構造設計の手法(住宅からスーパーシェッズまで)
佐々木睦朗 著

住まいの図書館出版局 発行 2,300円+消費税

住まい学大系シリーズなる掌中本、こんな本売れてるの? と思うが、珍しく構造設計のスーパースター佐々木さんの著書なので買ってしまった。僕と同じような、構造に弱いがその理念に憧れる設計屋がついつい買ってしまう本なんでしょうか?
素人さん向けの内容ではないのですが、20世紀から現在に至る構造デザインの体系的な流れがとても分かりやすく書かれています。文章も晦渋ではなく、とても優しい。佐々木さんの人柄の現れた名著だと思います。

伊藤豊雄との合作「仙台メディアテーク」で、その突出した才能が世間に認知(設計界だけ?)されましたが、すでにそれまで数多くの独創的な構造デザインを有名建築家と共に実作しているこの世界では大家のひとりです。
木村俊彦という構造の第一人者の落とし子のなかでは、一番弟子なのかな? 若手の設計屋とも協同する腰の低い人という印象があります。今でこそ当たり前になりつつある? 小住宅規模での構造デザインの先駆者でもあります。1946年生まれ、還暦近い老体と思われない精力的な活動を今も続けています。

意匠設計屋と構造設計の関係にふれると、今でも主従の様相を免れない。雑誌の発表にしても構造担当として列記されることも希ですし、社会的な認知度も低いのは残念なことです。
今を時めく、妹島和世はもとより世界の安藤忠雄にしても有能な構造設計家なしでは為しえなかった秀作がいくつもある。構造設計がその陰の存在から頻繁に脚光を浴びるのは、本当にここ最近のことでしかない。

佐々木さんの独創性は、構造解析の方法を命名するのが巧いところだ。
30㎝角の柱梁で組み上げるRC(コンクリート)造を小枝工法、鉄骨の柱とブレース(筋交い)の複合体を偏心ブレース構造、その他にパイプオルガン構造とか今ではメジャーになった鉄板溶接サンドイッチ床構造など、枚挙にいとまがない。そのどれもが僕らの学生時代には習うことも無かった実験的な工法で、その細い柱や薄い床厚を見るに付け、高層ビルの仮設足場に上にいるようなゾクゾクする感覚がある。不思議に?ここの処の地震や台風の自然災害にも一応耐え抜いているようで、やっぱ凄い構造屋さんなんだと改めて思った。

その独創性も、コンピューターに依る計算速度の向上が寄与しているのは事実だとして、要は意匠屋が勝手気ままに引いてしまった立体デザインを、感覚的に「いけるだろう!」と判断してしまえるのは、選ばれた才能に違いないのです。

長年のつきあいをしている難波和彦氏との対談で、小規模鉄骨のファブリケーター(鉄骨製作工場)の話題がでる。

「複雑なことをむしろ面白がって一緒に頑張ってくれるようになれば、少しずつ可能性(町工場の技術向上)はひろがって行く。設計でも同じ事が言えるんだけど、ただラインで機械的に仕事をやるのではなく、物をつくる喜びを味わって、次のプロジェクトに向かってさらに意欲的になっていける。そういう自己啓発というか、自分たちの物づくりとして力をより伸ばしていくことを喜びに感じるような、そんなチームづくりが大切だと思う……。」

耳に痛い提言ですよね。
僕ら設計者はやはり、いつも何処かで社会構造に対してアクションを起こすべきなんです。どんな些細なことでも諦めないでコツコツと……。多分これからは特に、僕ら地方のいち建築屋の存在意義はそう言うことに収束してゆくに違いないのだから。

お薦め度:格好良さだけで建築デザイナーをめざす若きひとに警鐘として星4っつ。

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