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住まい方の演出

住まい方の演出:渡辺武信
中公新書

建築家としても文章家としても評価できるひとは、割と少ないものです。
歴代の有名どころの出版本の中には、写真集でよかっただろうってガッカリした記憶がある。
僕が建築学科の学生の頃、この渡辺さんは建築雑誌によく顔を出していた。何年も過去の話で、渡辺さんも65歳の齢を重ねていることも不思議ではない。当時のコンクリート住宅の無骨なほどの造型性と味気ないほどの素材感、その中でも柔らかな感性を漂わせていた建物を多く設計していた記憶がある。
実はその武信さんが、以前から著名な映画通でそういった関係の雑誌には(勿論、実名で)評論やエッセイを数多く執筆していたのを知ったのは、この本に出会えたつい最近のことだったりする。
お恥ずかしい限りです。

中公新書には建築家の著作が珍しく多いのですが、武信さんの本はシリーズになるほど読まれてるようです。
「住まい方の思想」「住まい方の実践」の一応3部作みたいですが、中では「演出」と銘打ったこの本をお薦めします。
ストーリーめいてて映画の書き割りのような構成を意識して書いています。とても専門的な内容なんですが、初心者の方が読み解くにも容易く、設計屋がいつも何を考えて図面を起こしてるのかとか、自分の生活の中で建築をどんな風に楽しもうとしているかが、丁寧に語られています。
楽しいのは、懐かしの映画の名場面のエピソードを散りばめて、とってもグローバルな生活観を展開していること。題目どおり、生活を演出して住宅も演出して楽しもうという姿勢が、好印象の一冊です。
驚く無かれ、武信さんには「詩集」という著作もあります。多分、本屋で目にしていても同一人物と判断できず見逃していたのでしょう。それにしても多才な人です。
なんかモダンでダンディな、オシャレな老紳士をそのまま絵にしたようなひとなんでしょうか?

建築時評としてはさすがに古いのは否めませんが、近代化の時代を生き抜いてきた先輩に「やはり、あなた達は凄かった!」と喝采を贈りたいと思います。

お薦め度:住宅を初心に戻って考えたい人に星4っつ。

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