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中原中也

中原中也:ダイソー文学シリーズ20
大創出版

別に奇を衒ってるつもりは更々ないのですが、いわゆる100円ショップの文庫本です。
夏目漱石から始まって詩人・伊藤左千夫まで手持ちの本の奥付けにだけでも、もう30冊発刊されてます。社長の西田さんが余程文学好きなのかと、微笑ましく思えます。
期待せずに広げた割に、というより予想以上の上出来な内容に感激してしまいます。
特に中原中也ものは、このところ改訂版もなく寂しくしてましたが、山口市の中也記念館の情報もあり、ちょこっとネタのコーナーが笑えたり、語句解説も丁寧です。(たまにこれは?も在りますが)
「山羊の歌」と「在りし日の歌」の(中也はこの二つしか出版本を残してません)ほぼ全編を収録、仮名遣いや漢字表記も読みやすくしていて、初心者にもわれわれ愛好者?の掌中にも最適です。
まったく得した気分にひたれます。
この愛すべき早世の詩人は、山口の素封家の家を飛び出し京都・東京と知人を頼りに文学を志す、あの大正時代当時の標準的な文学青年です。
童顔と無鉄砲さが同居した独特なパーソナリティに、同人は不思議な彼の感性に振り回されてしまいます。有名な小林秀雄と長谷川泰子との奇妙な三角関係や長男・文也の病死による躁鬱病の発症と話題の尽きぬ人生でした。生活にも文学にも疲れて故郷山口に帰るのですが、「在りし日の歌」発刊を前に30年あまりの人生を閉じます。
悲運の詩人というには、あまりに強烈な詩作と情熱の内に走り去ったひとで、そのリズム感や独自の感性の語句には、琴線に直接響く物が多いと思います。
「汚れっちまった悲しみ……。」の中也も良いですが、僕は帰京する直前の詩作「春日狂想」の「愛するものが死んだ時には、自殺しなきゃなりません。」からはじまる長い独白が好きです。

ではみなさん、
喜び過ぎず悲しみ過ぎず、
テムポ正しく、握手をしませう。

つまり、我等に欠けているものは、
実直なんぞと、心得まして。

ハイ、ではみなさん、ハイ、ご一緒に--
テムポ正しく、握手をしませう。

なんか飄々と生きて見たかった、中也の希望が満ちあふれてて、泣かせます。
詩作=人生の生活を想像してみることも叶わない現代に、若き詩人たちが命を賭してまで語り尽くせなかった文学という軌跡を辿ってみるのも、秋の夜長の役得です。

お薦め度・10月22日中也の命日に黙して、星四つ。

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