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日本のフォーク私的大全

日本のフォーク私的大全:なぎら健壱
ちくま文庫

アポロキャップの変なオヤジ、なぎら健壱の会心の一冊である。プロフィールを読むと僕と年齢の差が思ったより無いのに愕然。昭和30年代後半から40年代を駆け抜けた同世代のはずなのに、なぎらさんはひどく活発で奔放な青春期を送ったようだ。

この本は、アングラ(メッセージ)フォークソングをこよなく愛するおじさんの年譜であり、交友録であり、自叙伝でもある。
なぎら健壱を初めて聞いたのは、確かチューニングの悪い文化放送の深夜番組での放送禁止歌の特集だった。有名な、お相撲さんのまわしが落ちてしまう件を長々と唱ったコミックソング「悲惨な戦い」が、伏せピー音だらけのライブ版で妙に笑いでざわついていた。
でも実際のお付き合い?は「葛飾にバッタを見た」の郷愁にあふれたメロディの方で、僕はほとんど数週間は、中学校の登下校に口ずさんでいた。間違いなく、思い出の一曲である。

なぜかNHKでのフォーク特集と言えば、なぎらとアルフィの坂崎になる。今でもBS放送で番組を持ってるらしいから立派だ。この番組ではじめてフォークシンガーだったの?ってひとも多いみたいだ。グッとメジャーになって僕も嬉しい。
「だから本が出版されて売れた?」というには反駁したくなるほど、この本はよく出来ています。
「高石ともや」から始まり「岡林信康」、「吉田拓郎」は勿論、暴れん坊「泉谷しげる」(当時は実際のところ大人しかったらしい)から「井上陽水」まで、フォーク全盛期を網羅した内容にワクワクする。裏事情も豊富だし、気の合わなかった連中はこき下ろしの「私的」というに相応しい、読んでて胸の空く文章でもある。

一番嬉しいのは、「高田渡」と「加川良」を最高!と評してくれてること。まさに感性には乾杯もの。復興版のCDが出れば、数万円出しても惜しくない名曲を残したこのふたり。今なお健在の音信を聞くたびに、ほくそ笑むのはその年代を生きて涙してきた人には分かるはず。その他にも文中に「古井戸」や「RCサクセション」の当時がうかがえて懐かしいどころか、タイムスリップしてしまってどんどん記憶が甦ってくる。
僕らは同級生の家に集まっては、兄貴のお古のフォークギターをチューニングも程ほどに、高田や加川をコピーしたり、ライブ版LPを掛け流して参加した気分になったり、好きな娘に詩の一部を贈ったりしたもんだ。恋愛してはLPを買い、失恋してはLPを聞きながら慰めあう。なんか暗いけど、感情に溢れた青春期だった。

1970年代とも称するフォーク全盛期。セピア色のLP盤の時代に帰れるわけではないけど、あのころの詩はいまでも胸に沁みる。

お薦め度:その時代の同志には星4っつとソノシートのおまけ

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