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ハマボウフウの花や風

ハマボウフウの花や風:椎名 誠
文春文庫

そう言えば最近読まなくなったなぁ、椎名誠。一時期はどっぷり染まって、書く文章がすべて椎名口調?にまでなったこともあったのに……。今はテレビで観て、相変わらず頑張ってるなぁと懐かしむ方が多い。理由を考えると、単純に文庫の背が薄い?こと。なんか損をするような感覚? 思えばその程度の理由で読まなくなったとは、申し訳ない。シーナ・ワールドの奥深さを讃えて、その非礼に報います。

この「ハマボウフウ……」は、シーナの作風の中では純文学に属する短編集です。息子の成長を描いた「岳物語」を始め、私小説から創作への変遷のなかで、シーナが鉛筆の先を舐めながら、あのモジャモジャ頭をゴシゴシ掻きながらの格闘の末にものにしたこれらの作品には、木訥とした本人の深層心理に触れた思いで感動を隠せません。
少なくともこの短編集には、本人が映画化した「三匹のアヒル」や山田洋次監督に目をつけられた「倉庫作業員」などがあり、分量に似合わない意欲的な作品群です。
他にもこれに分類される「犬の系譜」「はるさきのへび」あたりも、ふっと息を抜いたあとの力技で書いたような意気込みを感じます。シーナの愛らしい特殊な面が見られますよ。

椎名と言えば、格闘技系ドタバタ旅行記や酒焼けの男くさい交遊記が浮かぶひとも多いでしょう。万年不良青年も、昭和19年うまれの今年「還暦」を迎える御歳です。想像を超えた若さです。すげぇー。
相変わらず軽妙なSF短編には、壊れちゃったかな?と思うような発想の抱腹ものが沢山あって、非常に楽しませてくれます。リズム感抜群の創作日本語も健在? 基本的に人を楽しませたい椎名さんの趣味が、嬉しいわけです。

年齢的に許せば、「アド・バード」に続く長編ものを期待するのは僕だけ?
本当のところ、シーナは世界でも十分通用する作家だと豪語できます。
こんなに器用でオタッキーで、愛される作家は少ない。
だれか、本気で商業ベースに乗せてくれ! そして大好きな映画を作らせてあげてください。

お薦め度:他の作品もまとめて、星4つ

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