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ここに地終わり 海始まる

ここに地終わり海始まる(上・下):宮本輝
講談社文庫

なぜかこの作家には後ろ髪を引かれるような少女趣味の感覚で、感情移入してしまう。
宮本輝。「蛍川」で芥川賞受賞。その後、「道頓堀川」、「青が散る」などの純文学を極めた後、有名な「優駿」あたりからの長編のロマン文学に秀でて、現在も筆を休めぬ多作な人です。
やはりデビューは峻烈で、自叙伝とも言うべき告白体の関西弁の流暢な文体は、心を引きつけてラストシーンでは涙と感動の余韻で、一週間はホロホロでした。
関西という土壌が育む、人生の重みを「たかが人生」とうそぶく気概は、坂口安吾にも通じる大衆文芸の奥深さを内包しています。文体は谷崎潤一郎を彷彿させ、プロットは夫婦善哉の織田作之助の世界を併せ持つ、器用で情感あふれる作家です。
この作品は、他の長編もののなかでも特にプロットのはっきりした読みやすい物語です。純粋培養された少女が、長い闘病生活(ちょっと古い?)のあと、社会に適合して行く中で恋をすることで、最後はすこぶる魅力的な女性になって行くという通俗的なものながら、話のながれに引き込まれます。
現代のフェミニストの権化は、すこし理想の女性像を強要しすぎる傾向はありますが、昔、夏目漱石の描く女性像に憧れてしまった文学青年には、共有できる感覚です。
どうも最近の宮本文学は、主人公のそれも女性の奔放さに集約されるみたいです。でもその柔らかい感触が、癒し系の現代に受け入れられるのだろうと思います。

多分、これは隠れベストセラーなのでしょうが、あえて純文学への郷愁をこめて、ここに挙げます。宮本輝よ、がんばれ!

お薦め度:星みっつ

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Comments

日常報告が、月常?になってますね。反省。
コノコノ女史の趣味ブログ、少し挑戦的ですが、許します。
HPをブログのネットワークですべて賄うのは無謀だと思いますが、新しい発想なのでこれも尊重します。
おいおい!最近の宮本文学を殆ど読んでるぞ!とタジタジのくろやぎです。是非、昔の短編集とかエッセイ集も読んでみてください。シミジミ泣けます。これって懐古趣味?
触発されて、もう少しフェチな読書に傾倒しましょうか!

Posted by: くろやぎ | Tuesday, October 05, 2004 07:02 PM

へー、これ面白そうなのでチェックしてみます。
読んだら読書感想文送ります。

宮本輝はまあまあ好きで、たまーに読んだりするけど、ただ上下二巻てのがいつもネックなんですよね。

あー今まで何読んだっけと思い、ネットで検索してみると宮本輝のホームページありました!
http://www.terumiyamoto.com/index.html

幻の光
焚火の終わり
月光の東
朝の歓び
オレンジの壺・・・ぐらいかな?


よーしゃべるおっさんてイメージがあるのですが・・・
大阪弁だからかなー?
物書きさんは、やっぱ寡黙じゃなきゃ。


私ごとではありますが、ブログ作ってみましたので覗いてみてやってください。
http://conocono.cocolog-nifty.com/movie/

取り合えず、趣味(内容はしょーもないです)のブログですが、これから仕事版(内容のしっかりした)のブログ作成予定ですのでまたご報告します。

Posted by: コノコノ | Monday, October 04, 2004 02:53 PM

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