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晩課

エド・マクベイン:挽課
ハヤカワ・ミステリー 訳:井上一夫

言わずと知れた「87分署シリーズ」である。市営の図書館にも多少の品揃え?があるハヤカワ新書、新書と言えばエド・マクベインと言うことになる。なんとこのシリーズは僕の生まれた1956から続いて、半世紀に渡るという「寅さん」もびっくりの刑事ものである。
その人気は何処にあるんだろうか。端的に言って「続き物」だからという要素が大きいと思う。キャレラ刑事を中軸に雑多な個性の87分署のキャラクターが、サザエさん並に鮮やかな人物像としてストーリーを動かして行く。感情移入なくして語れない世界だ。40作以上もあると全部読破したくなるのも仕方ないことだ。「サーガ物」ではないので、どこから読んでもそれなりに楽しめます。主人公もさして歳を取らないしね。
他にも刑事物の傑作はあるけど、マクベインの面白さは「プロット」の複雑さと明確さかな? たとえば「刑事コロンボ」のような謎解き要素はうすいけど、ぐいぐい話の奥行きに引き込まれて行く快感と、何度も失敗を重ねながらも着実に犯人に近づいて行くスリル感。何度読み返しても楽しめるのは、推敲を重ねた文章だからだと気付く。しかも毎回、趣向を凝らしたストーリー作りに気を遣っていてくれる。
だいたい2つ以上の犯罪?ストーリーが並列して進んで行くという構成は、この人が最初じゃなかったんだろうか。最近でこそテレビの湾岸署でも普通に使われてる手法だけど……。
あと、ハードボイルドの男臭さと、女性刑事のリアルな生活感、世情にも通じた多少猟奇的な犯罪ありのてんこ盛りサービスも見逃せない。
洋もの小説の難点は、名前を覚えられないことだが、さすがにこのシリーズの主人公たちは近所の知り合い並に覚えてしまった。それだけでも希少価値の刑事物です。

お薦め度:星みっつ

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