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ジャンプ

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佐藤正午:ジャンプ
光文社文庫

今日は少し毛色を変えて、日本の純文学? それも私小説という分野を現在風にアレンジすればこうなるなかなぁと思う作風を健気に守り抜く作家、佐藤正午の紹介だ。
二十数年前の半年間の失業中に、初夏の図書館で読んだ「永遠の1/2」からの長いおつきあいになる僕にとっては、半生をシンクロさせたこの作家は、あまりにマイナーかも知れない。
デビュー作の「永遠の1/2」は映画になったので、すこしは記憶のある人もいるかも知れないがその後、パッとしない作家稼業を長崎は佐世保の田舎で、穏遁生活?を続けている地味な作家である。
その後の作品、「ビコーズ」「彼女について知っているすべて」とひねた?恋愛小説を標榜していても、どこか都会人になりきれない鈍くささに愛嬌を感じる。
多分本人は、現在のダンディズムを目標にしているのだろうが、どうしても大正ロマンくささとバンカラという言葉が漂ったりして、憎めない男なのだ。
なんか、作家自身を作中人物と混同してるような文章になっているかも知れないが、正午の作品を読んでいると誰もがそういう感覚になるに違いない。雑誌の取材で本人は、勿論「ノンフィクションはノンフィクション!」と否定しているが、僕が「私小説作家」と唯一呼べる珍重な作家は彼だけだと思う。
ところが最近の正午の作風が変わって来たらしい。前作の「Y」からこの「ジャンプ」は、ミステリー調を色濃く出した構成を前面に出してきている。山田太一の「飛び夢をしばらく……」などの新しい類型に足を踏み入れたのか……。しかも、それがまた売れてるらしいのだ。
マイナーなものを応援したがる側の人間として、ちょっと寂しい気もするが、偶には広島カープのように弱小球団の優勝もいいではないか!
正午の魅力はなにより、軽妙な会話の掛け合い部分だと思う。これは山田太一ドラマも舌を巻く筈の臨場感と選別された言葉の秀逸さに違いない。地の文も、ひとつひとつ紡ぐようなセンテンスの連続に、芥川の小品のような敬虔さも感じる。この人は生来の「小説家」なんだ。競輪好きの他に取り柄のない本物の不器用な「小説家」なんだと思う。
褒めてるのか、貶してるのか訳のわからない解説になりつつあるが、今はもう感情論で語ってます。ご了承を!

お薦め度:星四つとブックカバーのおまけ?

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