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歳月のはしご

アン・タイラー:歳月のはしご
文春文庫 訳者:中野恵津子

海外物の純文学は出会いの機会が少ない。ヨーロッパ映画で取り上げられたか、村上春樹が訳者になったとかの話題性がないと書店に並ぶ機会さえない。僕の場合は、図書館の文庫コーナーを右の端から読み進めるという行動をとる活字中毒者特有の悪癖故に、偶然の掘り出しものに出会える恩恵を受ける。
最近特に感じることは、海外物の方が純文学性は高いのでは? 本来、お家芸のはずの日本文学は読者の質の低下もあってか、レベルが低くなったと思う。
実のところ、アン・タイラーはアメリカのベストセラー作家である。
僕が最初にであった作品「ここがホームシック・レストラン」は、秀作だった。田舎の居酒屋みたいなレストランに集う人物の描写が、ヒューマニズムにまみれてる。中編の作品でストーリーも淡々としたものだが、最後のページで泣いてしまった。
年齢的なものもあるんだけど、女流作家?の作品で初めて図らずも泣けた驚きは今でも何だったんだろう? と思う。
その後、「パッチワーク・プラネット」の頑固なアメリカのおばさんの独白を縫い合わせた作品を続けて読み、ついにこの「歳月のはしご」では、正式に本屋さんで久しぶりに購買してしまった。すごい嵌りようである。
内容は簡潔。いつものように海辺に散歩に出かけた主婦が、そのままバスに乗って蒸発?(古い言葉になっちゃったなぁ!)してしまう。悲惨な話じゃない。家族も普通に円満だし、蒸発した本人にも理由を掘り下げる程の詰めた思いもない。中年のおばさんがふと、知らない土地でひとり暮らしがしたくなっただけ? 考えれば、そら恐ろしい話だと、家庭を持つ親父は思う。でも何処かひとりの人間として同感できるところが、不思議な感覚だ。
エンディングもさして劇的でもなく、子供に見つかって連れ戻されるだけだけど、なんかホッとして、良かったじゃん。でも第2の人生も楽しめそうだったという断念を残して話が終わっちゃう。
これって、山田太一のテレビドラマみたい? 
とにかく、ついつい感情移入してしまう語り口とストーリーが、人生半ばの中年親父には堪らない小説です。

お薦め度:星四つ。

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